ロースクール(法科大学院)の定員見直しについて

平成20年12月19日に「中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会『法科大学院教育の質の向上のための改善方策について(中間まとめ)』に対する意見」として公表された日弁連意見において、ロースクール定員見直しについて言及されています。
それによると、

同特別委員会が法科大学院の教育の質の向上に向けて理念に沿った改善策の検討を進めていること、とりわけ「中間まとめ」が共通的な到達目標の策定を提言し、教育体制充実の見地から法科大学院の入学定員の見直しに言及していることは、評価に値します。

としたうえで、

ただし、教育内容の見直しにあたっては、いまだ理論と実務の架橋が不十分であり、実務基礎科目の一層の充実も必要です。また、法科大学院の定員の見直しでは、少人数による質の高い教育を実現するため、大規模校の定員の大幅削減等により、総定員を4000人程度にまで削減することが考えられます。他方、法科大学院の定員削減を進める場合、弁護士過疎・偏在解消の見地から、地域的な適正配置に留意すべきです。

以上をまとめると、

  1. 現在の定員(5千数百人)は多すぎ、4千人程度が適正
  2. 少人数教育を実施するために大規模校の定員を削減すべき
  3. 弁護士過疎地域や社会人出身者の確保などに配慮すべき
  4. その結果、教育体制を充実させて質の高い法曹を養成する

ということになりそうです。
極端に言えば、現行制度において法曹になるのが困難と目されるロースクール生成績下位層の千数百人を最初からロースクールに入学させないこととし、人的・物的教育資源を上位の4千人に集中投資して、今まで以上に教育の実を上げようということになりますか。
私見では、社会人や他学部出身者が一定程度含まれているであろう成績下位層をむやみに切り捨てなければ、法曹の裾野を拡大すること、多様な母集団を確保することに資する大きな意義がありますから、現行の定員で現行の教育体制の不備を徐々に改善していくことでもよさそうに思います。しかし、現実にそこまで裾野を広げたとしても、社会的に法曹に対する需要がないのであれば、法曹供給を少数精鋭とせざるを得ないということも理解できます。結局、社会の法曹需要は、景気動向、社会性向などで簡単に変動しますから、その時その時で見直し見直しつつ、調整していくしかないでしょう。法曹需要の喚起・掘り起こし努力は必要ですが、供給側の定員調整も必要な場合がありましょう。
法曹の卵の皆さんは、いづれの世においても力を発揮できるように日々力をつけることに専念なさってください。努力は皆さんを裏切らないと考えます。