大臣規範 株式信託 辞任

大臣規範について調べてみました
http://www.cas.go.jp/jp/siryou/kihan.html

規範の性質としては、閣議決定つまり内閣の意思決定ですから、国会の決議とは違い国民を直接規制するものではありませんが、内閣及び行政機関を規制します。
副大臣は行政機関の一つですから、規制を受けます。

さて、規範の構成は、前文と個別の具体的な服務規範からなります。以下に、条項を列記します。
  前 文
  1 国務大臣副大臣及び大臣政務官の服務等
  (1)服務の根本基準
  (2)営利企業等との兼職
  (3)株式等の取引の自粛及び保有株式等の信託
  (4)資産公開
  (5)パーティーの開催自粛
  (6)関係業者との接触
  (7)外国からの贈物等の受領
  (8)秘密を守る義務
  (9)国内外の旅行
  (10)公務員との関係
  2 府省の大臣、副大臣及び大臣政務官の職務等
  (1)適切な職務分担
  (2)所管行政の的確な把握と密接な連絡

さて今回問題となった内容をみると、

(3)株式等の取引の自粛及び保有株式等の信託

 国務大臣等としての在任期間中は、株式等の有価証券(私募ファンドを含む。)、不動産、ゴルフ会員権等の取引を自粛することとする。
 なお、就任時に保有する株式、転換社債等の有価証券(私募ファンドを含む。)については、信託銀行等に信託することとし、在任期間中に契約の解約及び変更を行ってはならない。(ただし、特定口座において運用しているものを除く。この場合においては、国務大臣等の職を退任した際に、同口座の在任期間中の取引残高報告書を内閣官房長官に提出し、在任期間中に取引を行っていないことを明らかにしなければならない。)

となっていますから、事実として

  • 就任時に株式を信託銀行等に信託していない
  • 在任期間中に株を売却した

ので、規範に抵触しています。

ところで、規範の趣旨目的が前文に記載されており、

政治家であって国務大臣等の公職にある者としての清廉さを保持し、政治と行政への国民の信頼を確保するとともに、国家公務員の政治的中立性を確保

となっていますから、本件の場合は副大臣の説明どおり、

  • 売却先が副大臣が実質オーナーの石油製品販売会社
  • 対象株式が副大臣がかつて社長を務め、現在は実弟が社長の会社

であれば、株式の親族間の単なるつけかえであって「損も得もない」のであれば、この取引だけについては、清廉ではなく、国民の信頼を直ちに失うものではないようにも思われるようなので、副大臣も取引時点においてそのように判断したのだと思われます。もっともな言い分と思われます。

以上のように、規範に実質的には抵触していないことを理由として、法的に争うのであれば争う余地が有るように思われますが、一方で、昨今の混迷する政局を勘案して、政治的にはあっさり自らの非を認めて辞任する方が良いとの判断だったのでしょう。