枯渇しているM&A市場
キリンとサントリー、高島屋とエイチ・ツー・オー(H2O)リテイリング、新生銀とあおぞら銀など統合を断念する企業。M&A(合併・買収)市場が低調です。冒頭の企業は、真摯な合併協議の結果、合併をしない方が良いとの判断になったのですから致し方ないと思われますが、根本的な問題は、経営統合の必要性をさほど感じていないとなるとことは深刻です。長期的には市場が縮小傾向にあるわが国の企業にとって、景気回復の兆候が見られる今年度は合併・買収のまたとない機会ではないでしょうか。
M&Aの助言サービスを手掛けるレコフによると、2009年の日本企業絡みのM&Aの件数は、前年比18%減の1957件にとどまっている。一方米国では、経済規模は日本の3倍程度であるにもかかわらず、この10倍の1兆ドル(約93兆円)相当のM&Aが毎年行われている。野村證券の執行役員、奥田健太郎企業情報部長は、景気が回復しつつあるため、統合を「せざるを得ない」企業は減っていると話す。つまり日本の経営者は単純に経営統合に関心がないのだ。奥田氏は、同社が1月から3月の間に取り扱ったM&Aは30件、約110億ドル相当で、今年はM&Aの急増は期待できないと述べる。 これは、日本経済の先行きの深刻さを意味している。富国生命投資顧問の桜井祐記社長は、日本企業は、縮小を続ける国内市場で、こぞって少ない取り分を奪い合い、徐々に筋力を失いつつあると懸念を示す。桜井社長をはじめ日本の経営者は、日本海の向こうの韓国をはじめとする他のアジア諸国が、過去10年に相次いで経営統合や合理化を推し進めるのを落ち着か ない思いでながめてきた。日本企業は今、少数精鋭の筋力たくましい海外のライバル企業との真っ向勝負で、簡単に打ち負かされてしまいかねない。今や売上高で世界最大の家電会社は、ソニーでもパナソニックでもなく、韓国のサムスン電子だ。(2010年 4月 22日WSJ)
事業承継とM&A―事例にみる親族承継か売却かその選択肢 経営承継円滑化法に対応
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