特許無効訴訟の勝率
特許庁によると、同庁が特許を認めなかった審決を裁判所が取り消し、特許を有効とした率は、04年度の3%を底に上昇に転じ、それまでの10%前後から08年度に一気に30%台に上昇。09年度も同水準で推移しているとされる。
特許庁や裁判所が特許の有効性を判断する主な基準として、その発明の「進歩性」が挙げられる。特許法は「進歩性が認められるためには、既存の技術からは容易に連想できない発明である必要がある」と定める。最近の知財高裁の進歩性についての判断基準が明確に表れている判決がある。酒井化学工業と川上産業の間の審決取り消し請求事件だ。09年3月に同判決を書いた飯村敏明判事は、進歩性を判断する際の留意点として、以下を挙げた。(1)発明の明細書から得た知識を前提に事後的に分析して、その発明が容易に思いつくものだと判断してはならない(2)(進歩性を否定するためには)先行技術の文献に、当該発明に関する示唆が存在する必要がある――などだ。進歩性をむやみに否定しないよう、特許成立のハードルを下げたといえる。(2010/5/17日本経済新聞)
特許無効訴訟は、特許が有効なら特許権利者が勝訴、特許無効とされると特許権者は権利を失うことになります。特許権者としては、勝訴してやっと現状の特許権が有効であることが認められ、万一敗訴してしまうと権利を失うことになりかねません。そして、記事にあるように勝率は高くありません。
そうなると、権利者としては、特許無効を争わないようにするのが、一番良いと考えられます。しかし、現実はそれほど単純には割り切れません。例えば、権利者が他人に特許を侵害されて、相手方を訴えた場合に、相手方から、その特許が無効であると主張されることになるなど、特許無効を争う気はなくとも、必然的に争わざるを得ない立場になることがあるからです。
かように、権利者が敗訴を恐れて、権利侵害を排除するための、権利行使を躊躇することになる現在の制度運用は一考を要するでしょう。
記事中の判例
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090326100032.pdf
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