不動産任意売却促進法案

法務部会は17日、議員立法として取りまとめた不動産任意売却促進法案を了承した。同法案は、複数の抵当権が設定された不動産の売却を促進するため、裁判所による抵当権抹消を可能にするもの。ただし、抵当権者が1ヵ月以内に競売を申し立てた場合、または、売却予定額の5%を上乗せした金額で買い取る売却先を見つけた場合は抹消されない。現行法では、担保不動産はすべての抵当権者が合意しなければ事実上売却できない。このため、後順位抵当権者に納得してもらうため、土地所有者が法外な「ハンコ代」を支払わされるケースがあった。また、競売は手続きに時間がかかるため、その間に不動産価格が下落するなどのリスクを負わなければならなかった。同法が成立すれば、担保不動産を早期に売却し借金返済に充てることが可能になり、土地取引の活発化が期待できる。今国会に提出し、早期の成立をめざす。 (自民党HPより)

長い間検討されていた自民党「明るい競売プロジェクトチーム」の成果です。

複数の抵当権が設定された不動産の基本的な売却方法は、記事文中にあるように

  1. 裁判所の関与する競売の方法によるか
  2. すべての抵当権者の合意を得て任意に売却するか

です。競売は全抵当権者の同意は要りませんが、手続きに時間が掛かる上、任意売却と比べると安い価格で処分する事になります。一方、任意売却の方は買い手さえ見つかれば、競売よりも良い条件で売却することができますが、反面、すべての抵当権者の同意が条件となります。そのため、先順位債権額>=売却価格の場合、売却代金から債権の回収ができない後順位抵当権者に売却に納得してもらうために、法律上は必要とされていない「ハンコ代」を支払う必要がありました。そのため、ハンコ代の交渉に時間が掛かったり、交渉がまとまらずに不動産を売却できなくなるという事態が起こっていました。
今回の法案は、既に、複数の抵当権が設定されている担保物件の売却をしやすくなるするためとのことで、長年期待されていた法案がようやく実現にこぎつけたものと考えられます。
もっとも、新法が成立することによる、問題もあります。
現在は、第二順位以降に抵当権を設定しておけば、「ハンコ代」など何がしかの金額回収が見込まれていましたが、新法によれば、第二順位の抵当権からは同意が要らなくなりますから、回収が全く見込めない場合が考えられます。すると、第二順位以降の抵当権を利用するファイナンスに消極的になる金融機関が出てくるなどの影響が考えられます。
新法の利害関係は、第二順位以下の抵当権者の保護の必要があるかというよりは、第二順位以降の抵当権を利用するファイナンスをして欲しい債務者と、担保不動産を売却したい債権者・不動産関係者とのどちらを保護するかという事になりますか。