取得時効と不動産登記

時効により不動産を取得する場合の、第三者との対抗関係と、登記の方法についてまとめました。

1 所有権の取得時効と登記との関係に関する判例
(1)取得時効完成時の所有者に対しては、時効取得した者は完全に所有権を取得し登記を必要としない(T7.3.2)。
(2)取得時効完成後に第三者が所有権登記を経由した場合、時効による権利の取得を対抗できない。第三者が所有権登記を経由した後に時効が完成した場合は第三者に対して登記をしなくても時効取得を対抗できる(S41.11.22)。
背信的悪意者は第三者には当たらないから時効取得を対抗できる(H18.1.17)。
(3)取得時効完成後に第三者が所有権登記を経由しても、改めて取得時効に要する期間が経過して時効が完成した場合、時効取得した者は当該第三者には登記をしなくとも対抗できる(S36.7.20)。

2 取得時効の登記
(1)時効による取得は原始取得であるが、所有権を時効により取得した場合に申請できる登記は所有権移転登記である。
(2)所有権移転登記なので「時効取得」を原因とする移転登記の申請を、登記義務者(前の所有者)と登記権利者(新所有者)が共同申請することになる(不動産登記法60条)。
(3)裁判により確定判決を得れば登記権利者が単独で申請できる(同法63条)。