村上春樹、 「1Q84」で描くポスト冷戦の世界

ことし5月に出版された「1Q84」(全2巻)のタイトルは、英作家ジョージ・オーウェルの「1984年」を連想させるが、これについて村上氏は「最初はジョージ・オーウェルが近未来小説として書いた『1984年』があった。僕はそれとは逆に、近過去小説として、過去こうあったかもしれない姿ということで書きたいと思った」と話した。 この小説では、登場人物の「青豆」と「天吾」を中心としたストーリーが交互に展開され、性、愛、殺人などのほか、カルト集団や虐待、喪失などのテーマが描かれている。執筆の背景には、1995年のオウム真理教による地下鉄サリン事件や、2001年の米同時多発攻撃があったという。 「9・11の事件は、僕は、現実の出来事とは思えない。そうならなかった世界というのは、どこかにあるはず。今いる世界は本当にリアルな世界かどうかということに、常に僕は疑いを抱いている。こうではなかった世界もどこかにあるはずだ、という気持ちがどこかにある」と胸のうちを明かした。 「ポスト冷戦の世界というもののあり方を僕らは書いていかないといけないと思う。でもそれは、どれだけリアルに描いても書ききれないものだ。ではどういう風に書くかというと、メタファーで書くしかない」という。12人が死亡し、数千人が重軽傷を負った地下鉄サリン事件後、村上氏は60人以上の関係者にインタビューを重ね、なぜ人々がカルト集団に入るのかを追究してきた。「一体どういうふうに生きればいいのか、何を価値、軸として生きていけばいいのか、当然そういう疑問が出てくるが、今、特にこれという軸がない。カルトというものはそういう人たちをどんどん引き付けてゆくことになると思う。僕らができることは、それとは違う軸を提供することである」と村上氏は言う。(2009年11月24日asahi.com

アメリカの政治学者サミュエル.ハンチントンによれば、ポスト冷戦の世界においてはイデオロギーに代わり文明間の衝突が主たる紛争要因になるという。
我が国では、文明間衝突は起きていませんが、多様化する価値観による文明内の衝突が見られます。カルトは其の現れの一つでしょう。1Q84では、カルトとカルト以外の人々との衝突を描いて、カルトとは異なる生きる軸を提供することを試みるようです。
私たちも、価値観が多様化する中で、将来の弁護士業務は何を実現していくべきかを考えて参ります。

1Q84 BOOK 1

1Q84 BOOK 1

1Q84 BOOK 2

1Q84 BOOK 2