外国企業相手の裁判

法制審議会(法相の諮問機関)の国際裁判管轄法制部会は15日、複数の国にまたがる民事訴訟について、どのような場合に日本で裁判ができるかを定める「国際裁判管轄」に関する法整備要綱案をまとめた。日本の消費者が外国企業を訴える場合、住所が国内にあれば日本で提訴できることなどが柱。提訴する場所を明確にし、国際取引を円滑にする狙いだ。国際裁判管轄に関する民事訴訟法の規定はなく、裁判所が判例などを基に個別に対応しているのが現状。日本国内で提訴できるにもかかわらず、外国で裁判を起こした場合、費用や時間の面で大きな負担となる可能性がある。今後、インターネットを使った電子商取引の拡大などに伴って、外国の取引相手との問題が増えることが予想されるため、国内ルールを整備することにした。(2010/01/16NIKKEI NET)

国際裁判管轄については、平成20年から法制審議会国際裁判管轄法制部会で議論されています。以下、その法制審議会HPから引用です。議論の前提として、これまでの経緯が示されています。

最高裁判所昭和56年10月16日判決(マレーシア航空事件)は,「よるべき条約も一般に承認された明確な国際法上の原則もいまだ確立していない現状のもとにおいては,当事者間の公平,裁判の適正・迅速を期するという理念により条理にしたがって決定するのが相当であ」るとした上,この条理にかなう方法として,「わが民訴法の国内の土地管轄に関する規定,たとえば,被告の居所(民訴法2条),法人その他の団体の事務所又は営業所(同4条),義務履行地(同5条),被告の財産所在地(同8条),不法行為地(同15条),その他民訴法の規定する裁判籍のいずれかがわが国内にあるときは,(中略)被告を我が国の裁判権に服させる」べきであると判示した。さらに,最高裁判所平成9年11月11日判決は,上記マレーシア航空事件の準則を基本的に前提としながら,「我が国の民訴法の規定する裁判籍のいずれかがわが国内にあるときは,原則として,我が国の裁判所に提起された訴訟事件につき,被告を我が国の裁判権に服させるのが相当であるが,我が国で裁判を行うことが当事者間の公平,裁判の適正・迅速を期するという理念に反する特段の事情があると認められる場合には,我が国の国際裁判管轄を否定すべきである」と判示した。
以上の最高裁判決を踏まえ,現在の裁判実務においては,基本的には民事訴訟法の管轄規定に依拠しつつ,各事件における個別の事情を考慮して,「特段の事情」がある場合には我が国の裁判所の国際裁判管轄を否定するという枠組みにより,国際裁判管轄の有無が判断されている。

日本の消費者が外国企業を訴える場合、管轄だけが裁判を困難にしている理由ではありませんが、ルールが整備できれば、提訴の際に管轄が認められるか否かその都度ドキドキしなくてすみます。裁判を困難にしている理由がひとつ整理されそうです。

国際私法 (新法学ライブラリ)

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ポイント国際私法 総論 第2版

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