「キヤノン」職務発明の対価

レーザービームプリンターの基本技術を開発したのに十分な発明対価を受け取っていないとして、「キヤノン」(東京)の元男性社員が同社に10億円の支払いを求めた訴訟の上告審で、最高裁第3小法廷(那須弘平裁判長)は、原告、被告双方の上告を棄却する決定をした。
決定は19日付。キヤノンに約6956万円の支払いを命じた2審・知財高裁判決が確定した。1審・東京地裁は、同社が元社員に支払うべき発明の対価を約3400万円と算定し、同社に命じたが、2審・知財高裁は、
元社員の発明への貢献度を1審よりも高く認定し、同社が支払うべき対価を増額した。(2010年10月20日読売新聞)

会社に勤める従業者が業務として研究・開発した発明を「職務発明」といいます。会社は従業者から発明に関する権利を譲り受けることにより、発明を実施することができます。譲り受ける際に、相当の対価を払う必要があります。
 「相当の対価」は従来、社内ルール等で職務発明の対価の額が定められていた場合にはその額がそれになりました。
現行制度では、使用者と従業者の両当事者の間での話合いによる自主的な取決めにより対価を決めることができますので、一律に利益の何%といったことにはなりません。ただし、相当の対価に対して争いが生じた場合は、初めに自主的な取決めにより支払うことが不合理かどうかが判断されます。不合理でないと認められた場合は、自主的な取決めによる対価が相当の対価になります。不合理と認められる場合には、改めて裁判所の算定した額が相当の対価になります。
本件で対象となった発明は、画像に線が出るゴースト像を除去するもののようです。取極めにより払われた額が非常に小さかったので、裁判所の判断で上記の金額を支払うものとされました。

特許法 (法律学講座双書)

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