共謀共同正犯成立しませんでした

小沢一郎元代表の事件は、無罪という結論になりました。
この裁判について、

  • 政治的な問題
  • 検察審査会強制起訴の制度問題
  • はたまた、検察の証拠偽造の問題

など、裁判を取り巻く諸問題を含め、様々な論点がありますが、当ブログは弁護士のブログなので、以下裁判の内容についてのコメントに限定させていただきます。

さて、たまたま有楽町で産経新聞の号外をもらったので、産経ニュースの記述を元に、判決文を追ってみます。
それによると、判決内容は
1)「4億円が計上されず、りそな4億円のみが計上され記載されたことは、虚偽の記入に当たる」としたうえで、
2)秘書が「自ら判断できるはずがなく、無断で実行することはできないはず」であるから、
3)「(簿外処理は)被告人においても、時間をかけて詳細な説明をされるまでもなく、当然のこととして容易に認識し、了解したものと考えることができる」としつつ、
4)その証拠が不十分であるから、「報告を受けず、認識していなかった可能性がある」と「共謀を疑う相応の根拠はあるが、収支報告書に計上する必要性を認識していなかった可能性もある」との結論となり、共謀を認めませんでした。

1)〜3)の事実認定があれば、判例では「共謀には黙示的意思連絡があれば足りる」(最高裁平成15年5月1日決定)とされていますから、共謀は成立し有罪が結論ではないかと思っておりました。
ところが、判決文では「本件公訴事実のうち、被告人の故意及び、実行犯(元秘書ら)との間に共謀については証明が十分ではなく、犯罪の証明がないことに帰着するから無罪の言い渡しをする」との結論になりました。疑わしいだけでは有罪を導くことはできない、有罪と結論するには確実な立証が必要といったところでしょうか。
刑事裁判官の判断過程について深く学ばせていただきました。

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