法科大学院 少数精鋭で多様性はどうなる?

法科大学院には、司法試験の受験指導に偏らず、法理論や実務面で、法律家としての基礎を身に着けさせることが望まれている。しかし、質の高い志願者が集まらなければ、大学院は能力的に劣る学生を受け入れざるを得ない。学生は十分な力を身に着けられないまま司法試験に臨み、不合格となる。まさに悪循環である。中央教育審議会は、入試の倍率が2倍未満の法科大学院に対し、定員を減らすよう求めている。これまでに約50校が定員削減を決めたのは、学生の質の確保の観点から、当然のことといえる。悪循環のそもそもの原因は、74の大学院が乱立していることにある。今後、実績を残せない大学院が敬遠される傾向は、さらに進むだろう。その結果、経営が悪化し、淘汰されるケースが出てくるのもやむを得まい。大学院同士の統合や再編も積極的に進めるべきだ。
 政府は、昨年は2000人余だった司法試験の合格者を、10年には3000人に増やす方針だ。都市部に集中する弁護士の偏在解消などのため、この増員計画は堅持していかねばならない。その際、合格者の質の低下をどう抑えるかが課題である。各大学院が、少数精鋭のきめ細かい教育を実践することが求められる。
 11年度からは、法科大学院を経なくても司法試験を受験できる予備試験が始まる。この受験者が多くなれば、法科大学院は存在意義が問われることになる。(2009年7月26日読売新聞)

司法試験合格者数だけで、法科大学院の質の高さを判断するのはいかがかとは思いますが、合格者を多く出すために、法科大学院ができることとしては

  1. 元々質の高い志願者に必要な教育を施す
  2. 質の高い志願者に比べて能力的に劣る学生に十分な教育で質を引き上げる

ことであって、必要十分な力を身に着けられないままのケースでは法曹にはなれません。定員削減をするということは、現状の多くの志願者に対して、必要十分な教育を施すだけの余裕がないという判断なのでしょうか。
では、入学定員を減らす効果はどこに出るでしょうか?結局、入学時に質の高かった者だけに法曹になるチャンスを与えることになり、能力的に劣る学生にはその機会はあたえられなくなるということでしょう。一方、定員を削減した結果、「多様性」が犠牲になる可能性があります。法曹の数の確保と多様性の実現の両方が、一歩後退することになりかねません。そこで、単に定員を削減するのではなく、定員の一定程度を社会人枠とか、医師・博士などの一芸枠など別枠とするか、有職者などが通いやすい夜間休日枠などを設けたりといった工夫があってもよいのではないでしょうか。