河村たかし名古屋市長、減税を提案する

減税政策と政治家 私は、政治家になってからずっと減税を唱えている。衆議院議員では消費税の1%減税、市長になってからは、市民税の1割削減を訴えてきたが、名古屋市では、減税条例案が議会で否決されてしまった。税を徴収する側は権力。権力は放っておくと膨張し、増税に走る。それに歯止めをかけるため、議員が生まれた。議員がするべき仕事は減税だ。減税をしない政治はいらないのではないか。「いいものを安く」というのは商売の鉄則。私は元々商売人だった。商売では、厳しい価格競争は当たり前、「財源がない」などという言い訳も通用しない。だから私は、今の政治に逆行して減税を訴え、少しでも安い税金で、よい行政サービスを目指している。

政治をとりまくうそ 日本の政治をとりまく大きなうそがある。一つめは、「日本の借金は900兆円で財政危機。国債は悪で、増税こそが勇気ある政治」という説。国債は借金ではなく、買い手が国内の金融機関であるうちは貯金だ。もし借金なら、なぜこんなに金利が安いのか。金利が低いのは、金が余っているから。庶民の懐にはないが、銀行には余っている。最近2年くらいのあるメガバンクの貯蓄投資バランスを見た場合、預貸率は75%。景気の低迷で、残りの25%は、民間で借りる人がいない。金利は下がっても、不況下では借りる人は増えない。だから、政府は金利政策に頼っても、解決にはならない。金は民間で使い切るのが一番良いが、民間や金融機関で余った金は、堂々と政府が起債して使い切るべきだ。

行財政改革――市民サービスと減税 民間では価格競争が要求されている。政治も競争するべきではないか。例えば名古屋市は、水道料金を下げた。いま持っている学生定期で、どこへでも乗れるようにした。市役所内から提案があった行政サービスだが、市としても、お金の負担は何もいらない。市民への還元やサービス向上こそが行革だ。
(2010年12月28日 読売新聞より)

全国の知事や首長らが地方自治の現状や課題を語る読売新聞の「第5期全国知事リレー講座」。今回の演者は名古屋市河村たかし市長でした。
河村市長は、政治家になるまえに、司法試験失敗での挫折を経験、それをバネに「人生をやり直そう」「社会の仕組みを変えよう」と選挙に出たとの経験を語りました。
なるほど現在の画期的な政策提言は「人生をやり直そう」「社会の仕組みを変えよう」との原点があるんですね。肌感覚からの提言であるために、行政と民間を同一視するのはやや問題があるようですが、有権者にはわかりやすい政策に聞こえるのではないでしょうか。

地方が変わる、日本を変える―全国知事リレー講座〈No.1〉 (全国知事リレー講座 No. 1)

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地方自治法概説 第3版

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