民法(債権法)改正主なポイント解説 その1 債権時効

現在検討されている民法(債権法)改正の主な論点について若干の説明をしてみます。その1は影響範囲の大きそうな時効を取り上げました。

1 債権時効とは
(1)債権時効の期間は、民法その他の法律に別段の定めがある場合を除き、債権を行使することができる時から[10年]を経過することによって満了する。
(2)その前に債権者が債権を行使することができること及び債務者を知った時は、その知った時から[3年/4年/5年]を経過した時に、時効期間が満了する。

[解説]現行の消滅時効制度は、債権の内容によって時効期間が区々なので、問題を生じている。そこで、特定の取引債権に特有の時効期間を定めることはしないで、債権の発生と債務者について債権者が認識した時、または認識の合理的期待可能性を債権時効期間の進行開始の要件とした(短期時効)。
ところで、債権が発生しても、債権者が債権発生事実と債務者が誰であるかの一方または両方を知ることができない場合にも、時効は必要である。そこで、「債権を行使することができる時」を、時効の起算点としたうえで、債権の発生と債務者について債権者が認識している場合より長期の時効を定めた(長期時効)。この考え方自体は現行法を踏襲するものでもある。

2 時効障害事由
(1)時効期間の更新、時効期間の進行の停止、時効期間満了の延期の三種類とする。
(2)時効期間の更新とは、それまで進行してきた時効期間を一旦無しにして、新たな時効期間の進行が開始する場合をいう。差押え、債務者の承認など。
(3)時効期間の進行の停止とは、一定の事由の発生により時効期間の進行が一時的に止められ、当該事由の終了後に時効期間の進行が再開し、残存期間の経過により時効期間が満了する場合をいう。訴えの提起、債権者と債務者の間における合意、ADR開始の申立てなど。
(4)時効期間満了の延期とは、時効期間の満了間際に一定の事由が生じた場合に、時効期間の満了がその事由の終了後に一定の期間が経過するまで延期される場合をいう。催告など。

3 債権時効の効果
現行法のように、遡及的消滅効ではなく、存否不認定構成(債権時効期間が満了したときは、その債権の存否について認定されない、したがって、債権の存在を前提とする法的主張が認められず、債権の不存在を前提とする法的主張が認められる)とする。現在の実務の考え方とは異なりますから、実務上影響が大きそうです。