懲戒解雇無効

日英同時通訳者として知られる上智大元教授の井上久美さんが、無許可兼業を理由に懲戒解雇処分とした大学側に地位確認などを求めた訴訟は15日までに、東京高裁(青柳馨裁判長)で和解が成立した。大学側が懲戒解雇を撤回した上で、自己都合による退職扱いとし解決金を支払うことが主な内容。井上さんは外国語学部教授だった平成19年3月、無許可で語学学校の講師を務めたなどとして懲戒解雇処分を受けた。昨年12月の1審東京地裁判決は「兼業は授業などに支障なく、大学側もホームページに元教授の兼業を記載していた」として、解雇無効や慰謝料の支払いを命じ、大学側が控訴した。井上さんは「大学復帰も考えたが、事業に専念するため和解を受け入れた。懲戒解雇ではなくなったことで名誉が守られた」と話している。(2009年5月16日 産経新聞

会社(本件では大学)は、従業員の解雇権を有しておりますが、労働法上、解雇できる場合が制限されています。
本件では、具体的な事情は明らかではありませんが、記事にあるような無許可兼業が争点だとすると、禁止できる兼業は兼業内容から見て労務提供に支障が生ずるか、企業秩序に違反する場合に限定されるとされますから、そうでない場合は懲戒解雇はできませんし、仮に禁止される兼業に該当したとしても、解雇権の濫用にあたる場合は解雇無効になります。

本件では、原審で解雇無効とされていますから、解雇できなくて復職させるかというとそれも困難と考えられ、実質的な解決を図るために和解が成立したと理解しております。