民法(債権法)改正主なポイント解説 その2 相殺

民法(債権法)改正の主な論点の説明第二段。その2は相殺。

1 相殺適状の要件などの原則的な考え方、例外的に相殺が禁止される場合など、相殺についての基本的な考え方は現在と変わりません。
2 現行法では、相殺は遡及効を有しています(第506条2項)が、遡及効を廃して相殺の意思表示のときに債務が消滅することが検討されています。
3 現在の実務では、相殺は差押え債権者に原則として対抗できます(無制限説)が、今後は差押え債権者に対抗できないことが原則とされ、例外として、自働債権が銀行取引や商社取引など当事者間の特定の継続的取引によって生じるものであるときは、合意によって差押え債権者に対抗できるとされます。例外を認められる範囲をどのようにするかによって、現行実務が影響を受けることになりそうです。
4 現在相殺は、同一の二人の当事者間でのみ行うことができますが、民法改正検討委員会では、必ずしも同一の二人の当事者が互いに債権を有するものではない場合においても、第三者弁済と同様の要件の下で第三者が相殺をすることができる趣旨の規定が検討されています。
5 相殺に関連して、ネッティングの規律として一人計算という概念が導入されています。