木を見る西洋人森を見る東洋人(ニスベット 村本由紀子訳)

本書は、東洋人と西洋人のものの考え方の違いを、多様な例を通して解明し、認知科学の常識を覆すチャレンジをしています。
著者は、数々の例を通してこのことの説明を試みています。例えば、訳者後書き(260ページ)に

アメリカ人と中国人の大学生に三つの単語(たとえばパンダ、サル、バナナ)を示して、これらのうちどの二つが仲間であるかを尋ねたところ、アメリカ人はパンダとサルを選んだが、中国人はサルとバナナを選んだ。中国人は、「動物」というカテゴリーよりも「サルはバナナを食べる」という関係を重視したのである。

との例が紹介されています。ちなみに、家人(もちろん東洋人)に同じ質問をしたら、やはりサルとバナナを選びました!
著者に限らずに、東洋人と西洋人のものの考え方が異なることを、指摘する人は少なくありません。
近時、交通事故訴訟の論点の一つに、脳脊髄液減少症がありますが、その専門家である篠永正道医師も、その著書『あなたの「むち打ち症」は治ります!』

あなたの「むち打ち症」は治ります!―脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)の決定的治療法

あなたの「むち打ち症」は治ります!―脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)の決定的治療法

の中で、西洋医学が木を見て森を見ないたとえとして、

このたとえどおり、個々の臓器をいくら詳しく診たところで、答えは得られないのです。病気を診るときは、臓器のみに目を向けるのではなく、まるごと一人の人間として総体的にみることの必要性・・・

と現代の西洋医学の限界を指摘しております。この指摘に有るような、西洋医学のアプローチでは脳脊髄液減少症のような病気を十分に説明できないのです。
本書は、西洋人と東洋人の思考の違い、また、その現実的問題を学ぶには勉強になる本です。